この記事では、中小企業診断士の学習を始めたばかりの方に向けて、一次試験の科目「中小企業経営・政策」の概要や勉強法を紹介します。
本記事の内容
- 中小企業経営・政策の概要
- 中小企業経営・政策の勉強法
- 中小企業経営・政策のポイント
本記事の信頼性
本記事は、約200時間の学習で中小企業診断士試験にストレート合格した中小企業診断士が執筆しています。筆者の勉強法は企業経営の専門誌「月刊 企業診断」(2021年12月号)でも紹介されています。

月刊 企業診断(2021年12月号)より抜粋
この記事を読めば、中小企業経営・政策の概要と、合格に向けた勉強のコツがよく分かりますよ!
もくじ
中小企業経営・政策の概要
ここからは、中小企業経営・政策の概要として、以下の内容を解説していきます。
- 出題形式・配点
- 出題範囲(テーマ)
- 難易度(合格率)
- 受験免除の要件
- 合格に必要な勉強時間
出題形式・配点など
満点 | 100点 |
形式 | マークシート |
問題数(最新年度) | 42問 |
試験時間 | 90分 |
中小企業経営・政策はマークシート式、100点満点の試験です。
問題数は基本的に42問、1問あたりの配点は2~3点です。
試験時間は90分で、一次試験の最後に行われる科目です。
出題範囲(テーマ)
中小企業経営・政策の出題範囲について解説します。
まず、中小企業診断士の試験案内から「中小企業経営・政策の科目設置目的」を確認しましょう。
科目設置目的
中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴 を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。
そこで、企業経営の実態や各種統 計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営 における大企業との相違を把握する必要がある。
また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や 地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。
このため、中小企業の経営や中小企業政策全般について、以下の内容を中心に知識を判定する。
要するに「中小企業が置かれている状況」や「国が行っている中小企業支援策・法律」に関する知識が問われる試験です。
もう少し細かく整理すると、以下のような論点(テーマ)の問題が出題されます。
主な出題テーマ
領域 | 主な出題テーマ | |
中小企業経営 | ||
中小企業概論 | 中小企業の定義・位置づけ | |
中小企業白書 | 中小企業の動向・事業環境 | |
小規模企業白書 | 小規模企業の動向 | |
中小企業政策 | ||
中小企業基本法 | 概要、基本方針、施策 | |
小規模基本法 | 概要、基本方針、施策 | |
中小企業施策 | 中小企業支援法、その他中小企業関連の法律 |
中小企業診断士の受験生以外にはあまりなじみのない内容ですが、合格後には最も重要になる知識と言えます。
なぜなら、中小企業に対する国の支援策は、企業の経営者の関心も高く、診断士として必ず知っておきたい知識だからです。
難易度(合格率)
中小企業経営・政策のここ5年の合格率は次の通りです。(※一次試験合格者をのぞいた合格率ですのでご注意ください)
年度 | 合格率(%) |
2020 | 16.4 |
2019 | 5.6 |
2018 | 23.0 |
2017 | 10.9 |
2016 | 12.5 |
経営法務や経営情報システムと同様、年によって急に難化するリスクがあるのが特徴です。
以前は、勉強した分だけ安定する科目という印象でしたが、ここ最近の傾向を見ているとそうとも言えません。
2~3年での一次試験合格を目指す人は、なるべく最初の年に合格を目指すのが賢明です。
暗記量も多いので、二次試験合格までを目指している2年目・3年目まで残すのは大変です。
受験免除の要件
次の条件を満たす方は、中小企業経営・政策の受験が免除されます。
- 前回および前々回の科目合格者
他の資格の保有などによる受験免除の仕組みはありません。
受験免除の仕組みについては、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください!
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合格に必要な勉強時間
中小企業診断士の勉強時間は、60時間程度を目安に考えましょう。
暗記量は多いですが、二次試験には全く出ない科目である以上、100時間以上をかけるのは非効率です。
なお、金融機関などで中小企業支援の仕事をしている人なら、もっと少ない時間で合格は可能です。
次の章からは、中小企業経営・政策の勉強法を紹介していきます。
中小企業経営・政策の勉強法【他の科目と全く違う】
中小企業経営・政策の勉強方法は、他の科目と全く異なります。
ポイントは以下です。
- 白書の概要を読む
- 過去問は解く意味無し
それぞれをくわしく解説します。
白書の概要を読む
中小企業経営・政策のうち、「中小企業経営」の分野は、『中小企業白書』と『小規模企業白書』の内容が出題されます。
まずは、白書を読みましょう。
ただし、全文を読む必要はありません。
というか、ボリュームが多すぎてとてもじゃないけど読めません。
まずは、中小企業庁の「中小企業白書」のページに進みましょう。
中小企業白書一覧が表示されるので、前の年の概要(PDF版)を開きます。
中小企業白書一覧。受験前年の概要版を読む
前年というのがポイントです。
たとえば、2021年8月の一次試験を受験する人は、2020年版を読みます。
間違えて最新版(2021年版)を読んで勉強すると悲惨なことになります。
ちゃんと書いているサイトが少ないのでもう一度言います。
白書は、受験する前の年の概要版を読んで下さい。
なお、2020年版は講義資料や解説動画などもついていますので、一度見ておくと良いでしょう。
概要版なら、20ページくらいなのでさくっと読むことができます。
過去問は解く意味無し
中小企業経営・政策に限っては、過去問を解く意味はありません。
なぜなら、その年の白書の内容や国の政策によって、毎年出る内容が変わるからです。
過去問集も、中小企業経営・政策は買う必要はありません。
ではどうやって演習を重ねればいいのかと言うと、予想問題集や模試を活用します。
予想問題集や模試には、白書の内容や、国の政策が反映されており、効率良く勉強できます。
予想問題集のおすすめはTBC受験研究会の「特訓問題集」。
約2時間の講義動画を、無料で何度でも見ることができます。

中小企業経営・政策攻略のポイント
ここからは、中小企業経営・政策の試験を攻略するためのポイントとして、次の2つをお話しします。
- なるべく遅い時期に勉強を始め、本番にピークを持ってくる
- 数字を丸暗記せず、推移・傾向をおさえる
ポイント①なるべく遅い時期に勉強を始め、本番にピークを持ってくる
中小企業経営・政策は、なるべく遅い時期に勉強を始めるのがコツです。
具体的には、試験の2ヵ月前くらいから始めるのが望ましいです。
なぜなら、暗記量が多い科目のため、あまり早く勉強しても試験直前期には忘れているからです。
やや極端ですが、本番1~2週間前から始めても問題ないです。
私も、白書の概要だけ目を通しておき、本格的に勉強を始めたのは試験の1週間前からでした。
通信講座のスタディングで講義を聴き、模試を解く。
それを何度か繰り返しただけで、本番で59点が取れました。
ポイント②数字を丸暗記せず、推移・傾向をおさえる
中小企業経営・政策の勉強で一番まずいのは、数字を丸暗記しようとすること。
暗記パンも無く何百個の数字を覚えるなんて無理ですね。
中小企業経営・政策の問題は、以下のように、数字の推移や傾向、比較を尋ねるものが多いです。
- 過去と比べて増えたのか減ったのか
- 最も数字が多い(少ない)要素は何か(例:最も訪日外国人が減少したのは中国)
- 特殊な動きをしている要素は何か(例:小売業のみ、業況判断DIが前年対比で上昇したなど)
こうした問題を解くためには、ただ数字を暗記するのではなく、「データから言える傾向は何か?」を考えながら勉強することが大事です。
まとめ:なるべく遅く始めて、ムダなく勉強しよう!
今回は、中小企業診断士一次試験の科目「中小企業経営・政策」の内容や勉強法を紹介しました。
最後に、本記事の内容をまとめたいと思います。
- 中小企業経営・政策は、中小企業がおかれている状況や、国の中小企業支援策などの知識が問われる科目
- 最近は難化するケースもある。2~3年で一次試験突破を目指すなら1年目に受かっておきたい
- 勉強時間は60時間を目安に
- 過去問は解く意味無し。白書の概要を読み、予想問題集や模試で勉強する
- 攻略のコツは①なるべく遅く勉強を始める②数字の推移や傾向をおさえる
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