この記事では、中小企業診断士の学習を始めたばかりの方に向けて、一次試験の科目「経営法務」の概要や勉強法を紹介します。
本記事の内容
- 経営法務の概要
- 経営法務の勉強法
- 経営法務のポイント
本記事の信頼性
本記事は、約200時間の学習で中小企業診断士試験にストレート合格した中小企業診断士が執筆しています。筆者の勉強法は企業経営の専門誌「月刊 企業診断」(2021年12月号)でも紹介されています。

月刊 企業診断(2021年12月号)より抜粋
この記事を読めば、経営法務の概要と、合格に向けた勉強のコツがよく分かるようになりますよ!
もくじ
経営法務の概要
ここからは、経営法務の概要として、以下の内容を解説していきます。
- 出題形式・配点
- 出題範囲(テーマ)
- 難易度(合格率)
- 受験免除の要件
- 合格に必要な勉強時間
出題形式・配点など
満点 | 100点 |
形式 | マークシート |
問題数(最新年度) | 25問 |
試験時間 | 60分 |
経営法務はマークシート式、100点満点の試験です。
最近は25問構成が多く、1問あたりの配点は4点です。
試験時間は60分で、2日目の最初に行われます。
出題範囲(テーマ)
経営法務の出題範囲について解説します。
まず、中小企業診断士の試験案内から「経営法務の科目設置目的」を確認しましょう。
科目設置目的
創業者、中小企業経営者に助言を行う際に、企業経営に関係する法律、諸制度、手続等に関する実務的な知識を身につける必要がある。また、さらに専門的な内容に関しては、経営支援において必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されることから、有資格者に橋渡しするための最低限の実務知識を有していることが求められる。このため、企業の経営に関する法務について、以下の内容を中心に基本的な知識を判定する。
要するに、企業経営に関する法律知識が問われる試験です。
もう少し細かく整理すると、以下のような論点(テーマ)の問題が出題されます。
出題されるテーマ
領域 | 主な論点(テーマ) | |
知的財産権 | ||
産業財産権 | 特許権、実用新案権、意匠権、商標権 | |
不正競争防止 | 不正競争防止法、営業秘密の保護 | |
著作権 | 著作権の権利、成立、存続、制限 | |
知的財産権の契約 | 産業財産権・著作権の利用に係る契約 | |
会社法など | ||
事業の開始 | 法人の種類、株式会社以外の法人 | |
組織再編 | 合併、事業譲渡、会社分割、株式交換・移転 | |
倒産 | 破産手続、会社更生、民事再生 | |
株式関係 | 株式の種類、株式会社の機関設計、株主総会 | |
民法など | ||
債権と契約 | 債権の意義、契約の種類・効力 | |
外国企業との取引 | 国際商取引の規則・条約、英文契約書 | |
民法 | 物件、相続、遺留分等 | |
その他法律 | 独占禁止法、下請法等 | |
資本市場へのアクセス | ||
情報開示 | 金融商品取引法と情報開示 | |
株式公開 | 株式公開の意義、留意点、手続 | |
社債 | 社債の種類、発行手続 |
法律に関する知識がガッツリと出題されます。
法律の勉強自体が初めての方だと、最初はどのように勉強すればよいか悩ましい科目になるでしょう。
また、中小企業診断士で唯一、英語の問題が出題されるのも特徴です。
対策は後ほどくわしく解説していきます。
難易度(合格率)
経営法務のここ5年の合格率は次の通りです。(※一次試験合格者をのぞいた合格率ですのでご注意ください)
年度 | 合格率(%) |
2020 | 10.1 |
2019 | 5.1 |
2018 | 8.4 |
2017 | 6.3 |
2016 | 11.4 |
中小企業診断士一次試験全体の合格率が20~40%程度ですから、経営法務の合格率はかなり低いことが分かります。
年度によっては、全受験者に一律で得点を追加するなどの調整が行われることもあります。
得点を取る難易度は、こんなイメージです。
- 40点:そこまで難しくない(20~30時間でもいける)
- 60点:急に難しくなる(80時間くらいはかかる)
- 80点:専門家じゃないと無理!
一次試験の一発合格を狙う人は、経営法務は深追いせず50点前後を確保できるようにし、他の科目でカバーするのが基本戦略になります。
また、科目合格制度を使い、複数年かけて合格を目指す人は、最初の年に経営法務の合格を目指すのがおすすめです。
(難易度が高い経営法務が2年目以降に残るのはプレッシャーになるため)
あわせて読みたい!
受験免除の要件
次の条件を満たす方は、経営法務の受験が免除されます。
- 弁護士、司法試験合格者
- 旧司法試験第2次試験合格者
- 前年度または前々年度の科目合格者
受験免除の仕組みについては、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください!
あわせて読みたい
合格に必要な勉強時間
合格に必要な勉強時間は80時間程度を目安に考えると良いでしょう。
一次試験で科目合格を目指す(60点以上を確保する必要がある)人は、100時間以上かけても構いません。
また、以下のような経験をお持ちの人は、もっと少ない時間でも合格は可能です。(50~60時間程度)
- 法学部出身者
- 企業の法務部、財務部などの勤務
- 司法書士、行政書士、宅建士等の受験経験者
次の章からは、経営法務の勉強法を紹介していきます。
経営法務の勉強法
経営法務の勉強は、まずは一次試験に共通する以下のポイントを意識して行いましょう。
- インプット学習・アウトプット学習はセットで行い、アウトプット8割を意識する
- 脳のリソースを使わない覚え方を考える
- 意味不明&出題頻度の低い論点は早く捨てる
- ノートを作らない
くわしくは下記の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
-
-
【初学者向け】中小企業診断士一次試験の内容と対策を徹底解説!
続きを見る
経営法務は完全なる暗記ゲームです。
知識を覚えていれば解ける問題が多くを占めています。
ただ、法律の知識の覚え方にはコツがあります。
そのコツを、次の章から解説していきますね。
経営法務攻略のポイント
ここからは、経営法務の試験を攻略するためのポイントとして、次の3つをお話しします。
- とにかく知的財産権・会社法をおさえる
- 表や図解で視覚的に覚える
- 民法を深追いしない
- 古いテキストを使わない
- 模試を必ず受ける
ポイント①とにかく知的財産権・会社法をおさえる
経営法務は、とにかく「知的財産権」と「会社法」をおさえるのが重要です。
なぜなら、経営法務の問題の約6~7割は、「知的財産権」と「会社法」からの出題だからです。
逆に言えば、「知的財産権」と「会社法」の知識が定着すれば、赤点回避(40点以上)は確実に取ることができます。
ポイント②表や図解で視覚的に覚える
法律の知識は表や図解などで視覚的に覚えるのがコツです。
ある法律単体の条文とにらめっこしても、疲れるだけで全然覚えられません。
令和2年度(2020年度)の一次試験の問題を1つ見てみましょう。
産業財産権に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 国内優先権制度は、特許法及び意匠法には存在するが、実用新案法及び商標法には存在しない。
イ 出願公開制度は、特許法及び商標法には存在するが、実用新案法及び意匠法には存在しない。
ウ 存続期間の更新制度は、意匠法及び商標法には存在するが、特許法及び実用新案法には存在しない。
エ 訂正審判制度は、意匠法及び商標法には存在するが、特許法及び実用新案法には存在しない。
経営法務では、上の例のように、関連する法律(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)の違いを尋ねるような問題が多いのです。
こうした問題を攻略するには、関連する法律をセットにして表で覚えるのがコスパの良い勉強法です。
ちなみに、私が使って合格した通信講座スタディングでは、法律の要点を対比させてまとめた表が用意されています。
これが超使いやすかった。
知的財産権の対比表。これ1枚で必要な知識がすべて身につく
使い方は人それぞれですが、私の場合は以下のように使いました。
- 最初は表を毎日チラチラ見てインプットする
- 知識が身についてきたら、空白の表を作り、中身を自分で埋める練習をする
これで、知的財産権を得点源にできました。
通信講座スタディングと市販のテキストを併用する「半独学」で合格したノウハウは、こちらの記事に全てまとめているので、ぜひあわせてご覧ください。
-
-
【独学】中小企業診断士に200時間で合格した勉強法を完全公開
続きを見る
ポイント③民法を深追いしない
経営法務では民法の問題が出ますが、あまり深追いしないのが賢明です。
なぜなら、細かな知識が問われ、問題の難易度が非常に高いからです。
難易度が高いということは、他の受験生との差がつきにくいことを意味します。
差がつきにくいのであれば、あまり時間をかけて勉強する意味はないということです。

民法よりも知的財産権と会社法が大事。そこは変わりません。
ポイント④古いテキストを使わない
経営法務の勉強では、古いテキストを使ってはいけません。
必ず、最新年度のものを使いましょう。
なぜなら、法改正による影響が大きく、古いテキストだと誤った知識を身につけてしまう可能性が高い科目だからです。
くわしくは中古テキストを買うときのポイントと注意点をご覧ください。
ポイント⑤模試を必ず受ける
経営法務対策では、模試を受けることが重要です。
なぜなら、模試は、直近の法改正から、本番での出題が予想される内容を盛りこんでいるからです。
直近の法改正に関する知識は、新しいテキストでも載っていない場合がありますが、模試を受ければ取りこぼしなく勉強できます。
また、大手予備校や通信講座が開催する「直前期の対策講座」も活用すると良いでしょう。
スタディングの例。合格模試と直前対策講座で直近の法改正にも対応可能

まとめ:効率よく暗記して難関科目を突破しよう!
今回は、中小企業診断士一次試験の科目「経営法務」の内容や勉強法を紹介しました。
最後に、本記事の内容をまとめたいと思います。
- 経営法務は、知的財産権や会社法などの法律知識が問われる科目
- 合格率10%前後の難関科目。一次試験の一発合格を狙うなら50点前後を確保したい
- 勉強時間は80時間を目安に。科目合格を狙うなら100時間以上かけても可
- 攻略のコツは①知的財産権・会社法を最優先にする②視覚的に覚える③民法を深追いしない④古いテキストを使わない⑤模試を受ける
当サイトでは、他にも試験対策に関する様々な情報を発信しています。以下の関連記事もぜひご覧ください!