この記事では、中小企業診断士の学習を始めたばかりの方に向けて、一次試験の科目「財務・会計」の概要や勉強法を紹介します。
本記事の内容
- 財務・会計の概要
- 財務・会計の勉強法
- 財務・会計攻略のポイント
本記事の信頼性
本記事は、約200時間の学習で中小企業診断士試験にストレート合格した中小企業診断士が執筆しています。筆者の勉強法は企業経営の専門誌「月刊 企業診断」(2021年12月号)でも紹介されています。

月刊 企業診断(2021年12月号)より抜粋
もくじ
財務・会計の概要
ここからは、財務・会計の概要として、以下の内容を解説していきます。
- 出題形式・配点
- 出題範囲(テーマ)
- 難易度(合格率)
- 受験免除の要件
- 合格に必要な勉強時間
出題形式・配点など
満点 | 100点 |
形式 | マークシート |
問題数(最新年度) | 25問 |
試験時間 | 60分 |
財務・会計はマークシート式の25問構成。
大半が計算問題にもかかわらず、時間が60分しかありません。
そのため、財務・会計の攻略には、解法を覚えるだけでなく、問題を使って早く解くスキルも必要になります。
なお、一次試験の財務・会計では電卓が使えないのでご注意ください。(二次試験の事例Ⅳでは電卓を使えます)
出題範囲
財務・会計の出題範囲について解説します。
まず、中小企業診断士の試験案内から「財務・会計の科目設置目的」を確認しましょう。
科目設置目的
財務・会計に関する知識は企業経営の基本であり、また企業の現状把握や問題点の抽出において、財務諸表等による経営分析は重要な手法となる。
また、今後、中小企業が資本市場から資金を調達したり、成長戦略の
一環として他社の買収等を行うケースが増大することが考えられることから、割引キャッシュフローの手法を活用した投資評価や、企業価値の算定等に関する知識を身につける必要もある。このため、企業の財務・会計について、以下の内容を中心に知識を判定する。
要するに、以下の分野の知識が問われる試験です。
会計(アカウンティング)
財務諸表(BS・PL・CF計算書)を通じて、企業の経営状況を分析する分野
財務(ファイナンス)
お金に関する企業の意思決定について分析する分野
もう少し細かく整理すると、以下のような論点(テーマ)の問題が出題されます。
主な出題テーマ
財務・会計の主な出題テーマは下の表の通りです。
領域 | 主な出題テーマ |
財務 |
|
会計 |
|
普段、数字に触れていない人だと「ウゲッ」となりますよね。
しかし、財務・会計は中小企業診断士試験の合否をわける重要な科目。
苦手意識を持ってはいけません。
難易度(合格率)
財務・会計のここ5年の合格率は次の通りです。(※一次試験合格者をのぞいた合格率ですのでご注意ください)
年度 | 合格率(%) |
2020 | 10.8 |
2019 | 25.8 |
2018 | 7.3 |
2017 | 25.7 |
2016 | 21.6 |
たまにめちゃくちゃ難しくなるのが特徴です。
試験対策としては、難化したと言われる2020年度(令和2年度)や2018年度(平成30年度)のレベルまで対応できるようにしておきたいところです。
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受験免除の要件
次の条件を満たす方は、財務・会計の受験が免除されます。
- 公認会計士、公認会計士試験合格者、会計士補、会計士補となる有資格者
- 税理士、税理士試験合格者、税理士試験免除者
- 弁護士または弁護士となる資格を有する者
- 前年度または前々年度の科目合格者
ここに注意!
簿記を持っていても財務・会計の受験は免除されません。
受験免除の仕組みについては、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください!
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ポイント
財務・会計は、二次試験の事例Ⅳでも肝になる科目のため、免除条件を満たしていてもあえて勉強して受ける人もいます。
合格に必要な勉強時間
合格に必要な勉強時間は100~200時間程度を目安に考えると良いでしょう。
幅があるのは、予備知識によって必要な勉強量が大きく異なるからです。
よくあるケース(受験者の属性や経験)ごとに、勉強時間の目安をまとめてみました。
私自身や、周りの受験生へのヒアリングをもとに整理したものなので、1つの参考としてお考え下さい。
ケース | 勉強時間の目安 |
初学者 | 200時間 |
経理部門担当 | 160時間 |
簿記2級保持者 | 120時間 |
金融機関勤務 | 100時間 |
金融機関勤務で、普段から財務諸表を読んだり、融資先の経営分析などを行っている人は、100時間くらいの勉強でも十分に合格可能です。
というより、もともと持っている知識だけで合格点が取れる可能性もあります。
これらのケースにあてはまる人は、まず一度直近年度の過去問を解いてみることをおすすめします。
財務・会計は難しい?
財務・会計は、中小企業診断士一次試験の中でも一番難しい科目であるとよく言われます。しかし、実際はそこまで難しくありません。
財務・会計が難しいと言われる理由は、多くの受験生がなれていない「計算問題」がメインの科目のため、計算=難しいというイメージが先行しているからです。
ところが、財務・会計の過去問をたくさん解いてその性質を考えると、次のことが分かります。
- 同じ解き方で正解できる問題が繰り返し出題されている
- 突拍子もないテーマの問題はほぼ出題されない
つまり、基本的な解法を正しく理解し、演習を積めば、一番得点が安定する科目なのです。
財務・会計の勉強法
財務・会計の勉強は、まず、一次試験に共通するポイントを意識して行いましょう。
- インプット学習・アウトプット学習はセットで行い、アウトプット8割を意識する
- 脳のリソースを使わない覚え方を考える
- 意味不明&出題頻度の低い論点は早く捨てる
- ノートを作らない
くわしくは下記の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
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【初学者向け】中小企業診断士一次試験の内容と対策を徹底解説!
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財務・会計攻略のポイント
ここからは、財務・会計の試験を攻略するためのポイントとして、次の5つをお話しします。
- 毎日練習し、手で覚える
- 本番では60~80点をねらう
- 簿記の知識が必要だが、簿記を取る必要は無い
- 過去問集は「過去問完全マスター」だけで十分
- 特に苦手なら、通信講座の「単科講座」を使うのもあり
ポイント①毎日演習し、手で覚える
財務・会計が苦手な人の大半は、公式や定理を頭で理解しようとしている人です。それでは点数は伸びません。
財務・会計は、毎日演習して手で覚えることが重要です。
必ず、毎日1問は問題を解きましょう。
できるなら3~4問くらいは解きたいところです。
手を動かして多くの問題を解くことでしか、財務・会計の地力は伸びません。逆に、手で覚えれば、演習量に比例して力がついてくる科目です。
問題の回答と復習をあわせて、1問10分程度で行いましょう。
これなら、30分で3問解くことができます。
ポイント②本番では60~80点をねらう
財務・会計に苦手意識を持つ人も多いでしょうが、本番では必ず合格(60点以上)を目指してください。
結局、二次試験でも合否を分けるのは事例Ⅳ(財務・会計)です。そのため、財務・会計から逃げることはできません。
さらに言えば、中小企業診断士試験に合格した後も数字から逃れることはできません。
独立診断士として活動するにしても、企業内診断士として活動するにしても、数値への感度は必ず求められます。

ポイント③簿記の知識は必要だが、簿記を取る必要は無い
財務・会計対策でよく聞かれるのが「簿記を取っておいた方が良いのか?」という質問です。
結論から言うと、知識としては必要ですが簿記の資格を取る必要はありません。
その理由は、中小企業診断士の勉強に簿記が必要無い理由に書いていますので、あわせてご覧ください。
なお、財務・会計の知識が全く無いという人は、簡単に書かれた入門書を読むことをおすすめします。
具体的には、財務分野なら「コーポレートファイナンス入門」、会計分野なら「財務3表一体理解法」がおすすめです。
ポイント④過去問集は「過去問完全マスター」だけで十分
過去問は、同友館の「過去問完全マスター」1冊で十分です。
リンク
たまに「意思決定会計講義ノート」などの難しい本に取り組んだり、大学教授が書いたような原価計算の専門書などを読む人を見かけますが、一次試験突破という目的から考えるとやりすぎ感があります。
当サイトでは「必要最小限の学習で成果を出す勉強法の紹介」を信条としていますので、これらの書物はオススメしません。
「過去問完全マスター」1冊を何周も回る方が、結果にはつながりやすいでしょう。
繰り返しになりますが、手で覚えること、毎日繰り返して反復学習することが大切です。
ポイント⑤特に苦手なら、通信講座の「単科講座」を使うのもあり
財務・会計を勉強する上でのポイントをいろいろとお伝えしましたが、「それでもやっぱり財務・会計は特に苦手だし不安」という気持ちの人も多いと思います。
そのような人は、通信講座の「単科講座」(科目を選んで受講できるプラン)で財務・会計だけ集中的に勉強するのも1つの選択肢です。
単科講座が用意されている主な通信講座は以下の3社です。
結論から言うと、スタディングがおすすめです。
これら3講座の価格や機能を表で整理してみました。
単科講座(財務・会計のみ受講)の価格・機能比較
講座名 | 価格 | 過去問の 収録量 |
過去問の 回答履歴記録 |
過去問の 復習機能 |
スタディング | 14,190円 | 普通 | あり | あり |
フォーサイト | 10,800円 | 普通 | なし | なし |
クレアール | ※23,000円 | 多い | なし | なし |
※1次基本マスター講義受講料(8,000円)+1次解法マスター講義受講料(7,000円)+1次直前完成答練受講料(3,500円)+1次過去問リバイバル答練(4,500円)
※最新の価格は、各社Webサイトにてご確認ください。
講義の品質や価格は、そこまで大きな差はありません。
しかし、決定的に違うのは、スタディングだけ「過去問の回答履歴の記録」と「過去問の復習機能」がある点です。
それぞれの内容を簡単に紹介します。
過去問の回答履歴の記録
スタディングでは、過去問を解いたときの回答履歴が下図のように記録されます。
記録される主な項目は以下。
- その時の正解・不正解
- 以前に解いたときの正解・不正解
- 最高得点および他の受講者との比較

過去問の復習機能
スタディングの過去問演習には、「復習モード」があります。(下図のオレンジ色の枠)
復習モードでは、「以前に自分が間違えた問題」と「自分が復習したいと選んだ問題」だけを解きなおすことができます。これが超便利なんです。

なお、他の2社(フォーサイト、クレアール)は、過去問と解説は提供されますが、回答履歴の記録や復習機能はありません。
財務・会計対策に苦しんでいる方は、ぜひ参考にしてください。
まとめ:財務・会計は地道に勉強を積み重れば得意科目になる!
今回は、中小企業診断士一次試験の科目「財務・会計」の内容や勉強法を紹介しました。
最後に、本記事の内容をまとめたいと思います。
- 財務・会計は一次試験の中でも苦手意識を持つ人が多い難関科目
- しかし、基本的な解法を地道に覚えればむしろ点数が安定し、得意科目になる
- 勉強時間は100~200時間を目安に
- 毎日、繰り返して過去問演習を重ねることが重要
- 過去問集を使うなら「過去問完全マスター」1択
- 特に苦手意識があるなら、通信講座の「単科講座」で勉強するのもあり(特にスタディングがおすすめ)
当サイトでは、他にも試験対策に関する様々な情報を発信しています。
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