この記事では、中小企業診断士の独立にありがちな失敗パターンと、その対処法についてお話しします。
私は、コンサル会社で経験をつんだ後に独立する中で、いろいろな経営コンサルタントが独立する姿を見てきました。
中には、うまく続いている人もいれば、思い描いた独立ライフを実現できずに辞めていく人もいました。
今回は、自分の体験談や周りで独立した人を見て分かった失敗パターンと、失敗パターンにハマったときの対処法を紹介します。
中小企業診断士として独立を考えている方、将来の独立に向けてこれから中小企業診断士を目指そうと考えている方にぜひ読んでもらえると嬉しいです。
本記事の信頼性
本記事は、約200時間の学習で中小企業診断士試験にストレート合格した中小企業診断士が執筆しています。筆者の勉強法は企業経営の専門誌「月刊 企業診断」(2021年12月号)でも紹介されています。

月刊 企業診断(2021年12月号)より抜粋
もくじ
中小企業診断士の独立の失敗パターン
ここからは、中小企業診断士の独立における失敗パターンとして、以下の5つを紹介していきます。
- 独立することが目的化していた
- 売れるサービスが無かった
- 事業のポートフォリオが偏っていた
- 顧客を獲得できていなかった
- コンサルスキルが不足していた
失敗パターンのほとんどは、これら5パターンのどれかです。
①独立することが目的化していた
一番多い失敗パターンは、「独立することが目的化していた」です。
独立は、社会のしがらみから解放された楽天地。そういうイメージ(幻想)を抱き、とにかく独立!となった結果、厳しい現実を知るというもの。
もちろん、考えすぎると行動できなくなるし「とりあえず独立」のもアリですが、独立ありきで無計画に動くと早期に失敗する場合が多いです。
意外と大変なのは、本業以外の雑務。
会計・税務的な処理、営業資料の作成、アポ・・・
独立すると、会社なら他部署や部下がやってくれた雑務を1人で全てこなす必要が出てきます。
会社に文句を言いつつ実は会社に思いっきり甘えていたこと、会社員だからこそ自分は価値を発揮できていたことに気づくのは独立あるあるです。
②売れるサービスが無かった
経営コンサルとして独立するからには、何かしらの売り物(サービス)を持っていないといけません。
独立診断士としてのサービス開発のポイントは2つ。
1:具体的な成果が目に見えるサービスであること
2:再現性があるサービスであること
それぞれ重要な話なので、補足します。
具体的な成果が目に見えるサービス
独立診断士のサービスは、成果(数字)が目に見えるものでないと売れません。
特に、大手コンサル会社出身者は注意。
大手コンサル会社で大企業向けのコンサル案件をやっていると、以下のような「ふわふわ戦略案件」の経験が増えがちです。
- 長期経営ビジョン作成
- 事業戦略策定
- システム導入戦略策定
「ふわふわ戦略案件」とは、それっぽい戦略を立てているけど、何の役に立つのか分からない仕事を指します。
残念ながら、大手コンサル会社がやっている仕事なんてそんなものばっかりです。
コンサルがいくら戦略を考えても、経営者には「そんなのウチも考えていたよ(革新性が無い)」「で、これで本当に売上あがるの?」とか言われるのが関の山です。
大手コンサル会社なら組織の力でゴリ押せますが、個人だと厳しい。
コンサルティングは無形のサービスですが、クライアントが得られるベネフィットはしっかり目に見える形じゃないといけません。
私がメインで行っているコンサルティングサービスは以下です。
- Webマーケティング・SEO ⇒ PV数・顧客からの問い合わせ増加
- Excel研修 ⇒ 従業員の時間外賃金削減(経理部など)
- パワポ研修 ⇒ 営業資料作成工数削減、歩留まり向上
どれも、成果が数字として見えるものを選んでいます。
大手コンサル会社の仕事を全否定するわけではありませんが、独立診断士が同じことをやるのは危険です。
再現性があるサービス
コンサルの仕事は、以下のように「再現しながら拡大する」のが効率的です。
「サービスを考え、いくつかのクライアントに実践する」⇒「成功・失敗のポイントを学習し、サービスを磨く」⇒「磨いたサービスを他社に展開する」
毎回、クライアントごとに1から頭を使っていては、いくらリソースがあっても足りません。
究極的には「うちのメソッドを使えばうまくいくからこの通りにやってください」と出来れば最高です。特定の領域に特化したコンサルは、このあたりが上手です。
例を1つあげましょう。「ガストロデュースジャパン」という、食品EC専門のコンサルティング会社があります。
創業者の圧倒的な知見とバイタリティで、食品EC業界の風雲児的な存在になっています。
同社のサービス展開の基本は「うちのメソッドを使え方式」です。
だからこそ、少人数でも効率良くコンサル案件を獲得し圧倒的なスピードで成長しています。
また、EC経由の売上向上という成果が非常に分かりやすい点も重要ですね。戦略系ファームでパワポを作って悦にひたっている人なんかより、こういう会社が本当の意味でのコンサルだと言えるでしょう。
③事業のポートフォリオが偏っていた
サービス開発に関するポイントを紹介しましたが、極端になって一本足打法になるのも危険です。
「自分にはこの道しかない!」となると、その1つが失敗したときの影響が大きい。
3ヵ月で独立を断念した体験談(外部サイト)などが参考になります。
経営コンサルタントとして、クライアントに「事業ポートフォリオを増やし経営リスクを分散せよ」とかいいますね。コンサルタント自身の仕事も同じです。
独占業務が無い分、中小企業診断士は色々な仕事にチャンレジした方が良いです。
④顧客を獲得できていなかった
どんなに素晴らしいサービスがあり顧客ニーズがあったとしても、自分が顧客と繋がっていなければ意味がありません。
コンサルにあちがちな勘違いとして「ガツガツと営業するなんてみっともない。いい仕事をしていれば自然とお客さんがついてくる」というものがあります。
そんなわけはありません。
弁護士の先生だって、個人としての仕事の獲得のためにあちこちの勉強会に顔を出し、名刺をバラまいている時代です。
ましてや、まだまだ認知度も低い中小企業診断士が営業マインドを持たずして成功するわけがありません。
⑤コンサルスキルが不足していた
サービスはあり顧客も獲得した。でも肝心のコンサルタントとしてのスキルが足りていなかった。
これも非常に残念なパターンです。
このパターンにおちいるのは「お勉強が得意」なタイプの人。
ググれば何でも分かる今の時代、「知っている」だけでは価値になりません。
知識を持っているのは当たり前。それを活かして、どのように人の課題を解決できるか(中小企業診断士としては顧客の売上・利益に寄与するか)が価値の源泉です。
経営会議に出てドヤ顔でコメントすればお金をもらえるのは、名前と存在だけでお金がもらえるくらいの功績を築いてきた人間だけです。
経営コンサルタントとして活動するなら、下に掲げるようなスキルは常に向上させる必要があります。
- 仮説思考
- ロジカルシンキング
- ドキュメンテーション
- 集計・分析(Excel)
- 資料作成(パワポ、keynote等)
- プレゼンテーション・話術
- 会議のファシリテーション 等
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ここまで、独立した中小企業診断士の失敗パターンを紹介しました。
次の章では、独立に失敗した、あるいは失敗しそうなときの対処法についてお話しします。
独立に失敗したときの対処法
ここからは、独立に失敗した、あるいは失敗しそうな時の対処法を紹介します。
独立生活に苦しんでいる人には、何かしらヒントになる部分があるはずです。
①転職する
独立に失敗したとき、もう一度会社員に戻るのも全然ありです。
独立の失敗がキャリアに悪影響を出したという話は聞きません。
中途採用をしていないないような「新卒主義」の会社には入れませんが、中小企業診断士として独立できた人ならいくらでも道はあります。
独立後の再就職なら、まずは大手人材エージェントの「リクルートエージェント」「DODA」に登録しておきましょう。
独立診断士ならコンサル会社に入れる可能性もあるので、コンサル業界特化型エージェントの「アクシスコンサルティング」を使うのもおすすめですよ。
②サービスのバリューアップ
自分が売っているサービスを、クライアントへの提供価値から考え直してみましょう。
具体的に上がる成果と、その対価が見合っているかを顧客の目線になって考えることです。
起業の科学などがヒントになるでしょう。
リンク
失敗パターンでもお話ししたとおり、具体的な成果が目に見えること、再現性があることがポイントですよ。
③副業でポートフォリオを分散
収入源は大いにこしたことはありません。
中小企業診断士におすすめの副業7選で色々な副業を紹介していますので、参考にして下さい。
たとえ数万円でも、安定収入があるか否かは精神衛生上大きいです。
特に私のおすすめはブログ運営。物事を調べて発信するのが好きな中小企業診断士にはぴったりの副業ですよ。
ブログ運営の始め方マニュアル
④Webサイト・SNSで顧客を獲得
この時代、独立診断士で自分のメディアが無いのはおすすめしません。
なぜなら、WebサイトやSNSがあれば、リアルでは届かない潜在顧客とつながることができるからです。
現に、私もWebサイト経由で何件もお仕事をいただいています。
「Webサイトなんて作ったことないから無理!」という人は、私のTwitterにご相談ください。
業者に払うと馬鹿高い金を取られるサイトの立ち上げを10万円で行います。
⑤コンサルスキルの向上
コンサルタントとして必要なスキルを1つずつ磨いていきましょう。
当サイトのコンサル仕事術のコーナーでコンサルスキル向上のコツを紹介しているので、ぜひご覧ください。
独立の失敗は悪いことじゃない
独立の失敗パターンや対処法を色々紹介しましたが、1つ誤解しないでいただきたいのは「独立の失敗は悪いことではない」ということです。
失敗しても、別の道でいくらでもやり直せばいいのです。
中小企業診断士の仕事は、在庫のいらない知的労働です。
そのため、仮に独立に失敗しても破産するようなケースは少ないです。
「独立なんてリスクでしかない」と壁の中から出てこない人より、外の世界に飛び出していく人の方が間違いなく成長できます。
独立診断士として活動を続けたいのであれば、この記事で紹介した対処法を実践すればいいですし、もう無理なら会社員に戻ったって何も悪くない。
目先の1~2年ではなく人生のトータルで自分の効用を考えることが大事です。
まとめ:後悔したくないならチャレンジすべき
今回は、中小企業診断士の独立にありがちな失敗パターンとその対処法を紹介しました。
独立の厳しい面の話が多くなりましたが、それでも独立して活動することは超おすすめです。
会社にしばられず、自分の時間とお金を好きに使えるという自由は何事にも代えられない幸福です。
記事の中でも書きましたが、仮に失敗しても他の道に進めばいいだけです。
チャレンジしなかった後悔はずっと残りますが、チャレンジして失敗した経験は将来の役に立ちますよ。
今回は以上です。
これから診断士を目指す人むけ
診断士として活動してる人むけ)