この記事では、中小企業診断士の学習を始めたばかりの方に向けて、一次試験の科目「企業経営理論」の概要や勉強法を紹介します。
本記事の内容
- 企業経営理論の概要
- 企業経営理論の勉強法
- 企業経営理論のポイント
本記事の信頼性
本記事は、約200時間の学習で中小企業診断士試験にストレート合格した中小企業診断士が執筆しています。筆者の勉強法は企業経営の専門誌「月刊 企業診断」(2021年12月号)でも紹介されています。

月刊 企業診断(2021年12月号)より抜粋
もくじ
企業経営理論の概要
ここからは、企業経営理論の科目の概要として、以下の内容を解説していきます。
- 出題形式・配点
- 出題範囲(テーマ)
- 難易度(合格率)
- 受験免除の要件
- 合格に必要な勉強時間
出題形式・配点など
満点 | 100点 |
形式 | マークシート |
問題数(最新年度) | 41問 |
試験時間 | 90分 |
企業経営理論はマークシート式、100点満点の試験です。
最近は41問構成が多く、1問あたりの配点は2~3点です。
試験時間は90分ですが、問題文と選択肢がボリューミーで、最初は全然時間が足りません。
試験当日は、「経済学・経済政策」「財務・会計」といった計算系科目の後に行われるため、脳が疲労している中で解かなければならないタフな科目です。
内容は「企業の経営戦略ど真ん中」で、中小企業診断士試験を象徴する科目です。

出題範囲
企業経営理論の出題範囲について解説します。
まず、中小企業診断士の試験案内から「企業経営理論の科目設置目的」を確認しましょう。
科目設置目的
企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。また、近年、技術と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。このため、経営戦略論、組織論、マーケティング論といった企業経営に関する知識について、以下の内容を中心に判定する。
なんだかよく分からないですね。
ということで、主な出題テーマを図に整理しました。
企業経営理論の主な出題テーマ
要するに、以下の知識が問われる試験です。
領域 | 問われる知識 |
経営戦略論 | 企業がライバルと戦い、成長していくための戦略など |
組織論 | 戦略の実行を支える組織づくり、社員のやる気をアップさせる施策など |
マーケティング論 | モノの売り方、顧客満足度を高める施策など |

難易度(合格率)
企業経営理論のここ5年の合格率は次の通りです。(※一次試験合格者をのぞいた合格率ですのでご注意ください)
年度 | 合格率(%) |
2020 | 19.4 |
2019 | 10.8 |
2018 | 7.1 |
2017 | 9.0 |
2016 | 29.6 |
合格率は他の科目より低く、かつ安定していないのが特徴です。
難しい年だと10%を切ることもあり、多くの受験生が苦しんでいる科目でもあります。
あわせて読みたい!
受験免除の要件
次の条件を満たす方は、企業経営理論の受験が免除されます。
前年度または前々年度の科目合格者
資格やMBAを持っていても免除されず、全員が受けなくてはならないという点がポイントです。
受験免除の仕組みについては、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください!
あわせて読みたい
合格に必要な勉強時間
合格に必要な勉強時間は100~120時間程度を目安に考えると良いでしょう。
コンサルティングファームや金融機関に勤めている人、経営企画部門などで働いている人は、もっと少ない時間(80時間程度)でも合格水準に達することは可能です。
その気になればいくらでも時間がかけられてしまう科目ですが、重要なテーマを見極め、割り切って学習することが重要です。
企業経営理論の難しさとは
企業経営理論は、まぎれもなく難関科目です。
難しさの理由は大きく2つあります。
企業経営理論が難しい理由①出題範囲の広さ
企業経営理論は、他の科目と比べて圧倒的に出題範囲が広いです。
そのため、勉強すべきポイント、しなくてもよいポイントの見極めが難しいのです。
仮に独学で企業経営理論から勉強しようものなら、大変なことになります。
いくら時間をかけても問題が解けるようにはならず、気持ちが切れてしまいがちです。
私も、2回ほど独学でほどトライしてあきらめた過去がありますが、そのときも最初に勉強していたのは企業経営理論でした。
企業経営理論が難しい理由②ムダに日本語が難しい
企業経営理論の試験問題は、日本語ムダに難しいです。
「難しい」のではありません。「ムダに難しい」のです。
問題文や選択肢は、わざわざ、回りくどくて難解な単語を使って説明してきます。
そのため、経営戦略の知識はもちろん、「日本語を読み解く力」も必要になります。
また、ハッキリと正解が絞り込めず「うーん、すごく迷うけどまあこっちかな?」という感じで釈然としないまま決断を迫られる場面も多い点も、難しさの1つです。
◆
◆
ここからは、そんな難関科目の企業経営理論の勉強法について紹介していきます。
企業経営理論の勉強法
企業経営理論の勉強は、一次試験に共通する以下のポイントを意識して行いましょう。
- インプット学習・アウトプット学習はセットで行い、アウトプット8割を意識する
- 脳のリソースを使わない覚え方を考える
- 意味不明&出題頻度の低い論点は早く捨てる
- ノートを作らない
くわしくは下記の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
-
-
【初学者向け】中小企業診断士一次試験の内容と対策を徹底解説!
続きを見る
また、企業経営理論ならではの勉強法として「とにかく本試験のムダに難しい日本語に慣れる」ことが重要になります。
実際の問題を見てみましょう。
パッケージ・デザインに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 多くのパッケージ・デザインにおいて蓋ふたは左に回せば開くようになっているように、パッケージでは人にある行動を自然に起こさせるアフォーダンスが重視される。しかしコモディティ化が進む中、アフォーダンスとは異なる新しい使い方の提案は、パッケージを通して差別化を図り、価値を高めやすい。
イ 消費者がブランドに対して抱くイメージに対してパッケージ・カラーは強く影響を与えるため、食品パッケージの色を濃くすることによって濃い味の商品であることを伝達することができる。しかし、パッケージ・カラーの色の濃さが、実際の商品の味覚にまで影響することはない。
ウ 脳の半球優位性に基づくと、パッケージにおいて画像は右に、文字は左に配置したほうが商品の評価を高めることができるため、このルールはほとんどのパッケージ・デザインで採用されている。
エ パッケージにおける便宜価値は、開けやすい、使いやすい、持ちやすい、捨てやすいといったパッケージの改良によって高めることができる一方、感覚価値は、パッケージ・デザインに対する情緒面の感覚が中身にまで移るような感覚転移の効果を生じさせることによって高めることができる。
オ ブランドを他の文化圏へ拡張する際に、パッケージがブランド・エクイティの維持や活用にどの程度役割を果たすかという点で評価される基準は、防御可能性と呼ばれる。パッケージ上のネームやカラーは、拡張先の特徴や文化的意味合いを考慮しながら移転を進める必要がある。
出所:令和2年度一次試験(企業経営理論)第36問
選択肢が多く、1つ1つも長いです。そして何より日本語が回りくどい。

しかし、このような試験だからこそ慣れが重要です。
インプット(テキストや講義で知識をたくわえる)の後にすぐアウトプット(思い出しながら問題を解く)を行うのは一次試験対策の基本ですが、企業経営理論は特に早くから過去問を解きましょう。
また、分量も多いので「早く読む訓練」も重要です。
問題の文章を早く読む訓練をするなら、通信講座スタディングの過去問機能が便利です。
スタディングの過去問機能
このように、経過時間を図りながら問題を解くことができます。
また、制限時間内に解かないと強制終了となるモードもあり、本番に近いプレッシャーをかけて、企業経営理論の試験に身体を慣らすこともできます。
企業経営理論攻略のポイント
ここからは、企業経営理論の試験を攻略するためのポイントをお話しします。
- 労働関連法規は捨てる
- 通信講座の活用も有力
- 過去問集やフレームワーク本も活用する
ポイント①労働関連法規は捨てる
組織論の1テーマとして、労働関連法規が出題されますが、ハッキリ言うと捨てた方が良いです。
労働関連法規は毎年5問程度出題されますが、非常に難しいです。
内容が深く、勉強に時間がかかるわりに問題の難易度が高く、期待できる得点はそこまで高くありません。
つまり、労働関連法規はコスパが悪い論点なのです。
その難しさは、社労士資格を持っている友人ですら「全然わからん!」と怒っていたくらいです。
対策は、テキストに書いている内容をさっと見て、過去問を1~2周解くくらいで良いです。

ポイント②通信講座の活用も有力
前述のとおり、企業経営理論は出題範囲が広大なので、重要な部分とそうでない部分の取捨選択が非常に難しいです。
初学者の方であれば、通信講座の活用も1つの手です。
特に、通信講座スタディングは、企業経営理論の出題範囲をしぼりにしぼって、全12回の講義で解説しているのでおすすめです。

ポイント③過去問集やフレームワーク本も活用する
通信講座や予備校の講義でも企業経営理論の試験対策は可能ですが、勉強の効率をあげたいのなら、以下2冊の本をおすすめします。
過去問完全マスター
当サイトでもおなじみの「過去問完全マスター」シリーズ。
論点別・重要度別に問題が整理されており、これ以上使いやすい過去問集はありません。
回答のページに、自分が分からなかったポイントをメモ書きしながら使うのが吉です。
過去問完全マスターを活用したくわしい勉強法は「200時間で合格した半独学勉強法」で解説しています。
超速フレームワーク
マッキンゼーで叩き込まれた 超速フレームワーク ――仕事のスピードと質を上げる最強ツール (単行本)
企業経営理論の出題範囲のうち、「経営戦略論」では様々なフレームワークが登場します。
フレームワークは、言葉よりも視覚的にとらえた方が理解しやすいです。
そこで、フレームワークを図解した本が手元に1冊あると勉強がはかどります。
おまけ:絶対に理解しておきたい必須フレームワーク
ここからは、おまけとして必ず理解しておきたいフレームワークを紹介します。
SWOT分析
SWOT分析は、企業をとりまく以下4つの要素に着目して、事業の評価や戦略策定を行うフレームワークです。
SWOT分析の4要素
Strength | 自社の強み(例:特許を持つ、熟練した社員の存在など) |
Weakness | 自社の弱み(例:顧客接点が少ないなど) |
Opportunity | 自社にとっての機会(例:市場の拡大、規制緩和など) |
Threat | 自社にとっての脅威(例:代替品の出現、景気後退など) |
これらの要素を、下の図のように4象限に整理し、どこにプロットされるかで評価・戦略が変わってきます。
SWOT分析
SWOT分析は二次試験を解くために最重要なスキルです。
なぜなら、実際にSWOT分析をしたり、分析結果から改善策や打ち手を答えさせる問題が多く出題されるからです。
もちろん、一次試験でも出題されるテーマなので、まずおさえておきましょう。
まとめ:早めから過去問に触れて、難解な日本語に慣れよう!
今回は、中小企業診断士一次試験の科目「企業経営理論」の内容や勉強法を紹介しました。
最後に、本記事の内容をまとめたいと思います。
- 企業経営理論は、経営戦略の知識が問われる中小企業診断士試験のコア科目
- 範囲の広さと、問題文・選択肢の日本語の難しさが特徴
- 勉強時間は100時間を目安にしよう
- 他の科目よりも早めに過去問に取り組み、独特な言い回しに慣れることが重要
- 「過去問完全マスター」やフレームワークの図解本があると効率的に勉強できる
- 早く解く練習をしたいなら、通信講座「スタディング」の過去問機能で時間を計測しながら解くのがおすすめ
当サイトでは、他にも試験対策に関する様々な情報を発信しています。
以下の記事もおすすめなので、ぜひご覧ください!